2016年11月1日火曜日

弔奏 故人を悼む 平曲語り 古澤月心作



    故人を悼む   弔奏・平曲語り 古澤月心作 

祗園(ぎおん)精舎(しょうじゃ)の鐘の声、諸行(しょぎょう)無常(むじょう)の響きあり。
沙羅(さら)双樹(そうじゅ)の花の色、生者(しょうじゃ)必衰(ひっすい)(ことわり)(あらわ)す。
人の世は久しからず、(ただ)、春の夜の夢の如し。 

古来より、長生(ちょうせい)不老(ふろう)(じゅつ)を願い、蓬莱(ほうらい)不死(ふし)の薬を尋るも、未だ、そを見つけたる(ため)し    無し。
天運(てんうん)尽きぬれば、人の(ちから)(かの)うべしとも見えざりけり。悲想(ひそう)八萬(はちまん)(ごう)必滅(ひつめつ)(うれ)いに()う。天人五衰(てんにんごすい)(かな)しみは、人間(にんげん)にも(そう)らひけるものかな。()()(まぼろし)(あいだ)(いとな)み、(すで)流転(るてん)無窮(むきゅう)なり。転生(てんしょう)輪廻(りんね)車輪(しゃりん)(めぐ)るが如し。

此度(こたび)(きみ)突然(とつぜん)()()い、(いま)家族(かぞく)兄弟(けいてい)親族(しんぞく)友人(ひつぎ)に手を()て、哀憐(あいれん)滂沱(ぼうだ)(なみだ)(ぬぐ)わんや。
(ただ)(ねが)わくは、君、安らかに(ねむ)らんことを(いの)るのみ。